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技術情報一覧 <ハイレゾ対応マイクロフォン「MEMS-F1」
フィデリックスはハイレゾ対応マイクロフォン「MEMS-F1」を2024年春に発売する予定です(特許出願済) 。 中川 伸

暫定規格は13Hzから80kHzまでの、いわゆるハイレゾ対応の無指向性マイクロフォンで、暗雑音は18.5dB、出力は40mV、最大SPLは130dB 、ファンタムは48V専用で、最先端のMEMS技術を応用したものです。

マイクロフォンには、計測用と音楽用と超小型のスマホ用などに分けられます。計測用は精度が命で、秤を例にすれば、ぴったりでないと貴金属取引などで困ります。同様に計測用だと周波数特性が平坦で、感度の安定性も重要です。しかし、音楽用は用途によって特性のチューニングをします。例えば、ボーカル用として有名なSHUREのSM58は、100Hz以下を減衰させ、8kHz付近にピークがあります。それは吹かれ音をなくしたり、明瞭度を上げたり、指向性を強めにしてハウリングマージンを増やすなどの理由があるからです。振り回して落としても、壊れてはダメです。一般に、音楽用は高域を少し持ち上げる傾向が多々見受けられますが、音源から離れると高域は減衰し易いからとも言われています。

今回のマイクロフォンはコンデンサー型による音楽用です。ただし、半導体技術で作られた超小型デバイスなので、ダイヤフラムの直径は何と1mmと完全に常識外で、電極間も桁違いに狭いです。人の耳に対して、ネズミの耳という感じでしょうか?小さければ周波数特性は伸びやすいのですが、感度はどうか?と思いきや、一応は実用レベルになっています。実はスマートフォンには既に多く使われているので、信頼性は実証済みです。しかし、高音質収録をするには、いくつかの課題があり、それらの一つ一つを克服すべき技術と組み合わせる事によってようやく実現しました。

その前に今回の周波数特性の測定方法ですが、Agilent 89410Aからのホワイトノイズをアンプと保護用コンデンサー経由で4kHz以下を減衰させ、リボンツイーターPT-R7に入れます。これは超高域の周波数特性については最も信頼しているモデルです。マイク出力もアンプを通して89410Aに入れますが、そもそもノイズ波形なので、ギザギザの波形になります。それを500回ほど重ねて平均化すると、写真下のように滑らかになります。他に測定用マイクとしてのEarthworks OM-1、音楽用としてのSANKEN CO-100k、B&K4006のデータも参考に載せておきます。よく見ると、80kHzまでは100kHzのモデルと同等なので、80kHzまでと表示しても良さそうです。測定したツイーターの特性がフラットだとすれば、これらのデータはそのままOKですが、PT-R7の公表データーによれば100kHzで10dBほど下がっているので、その補正分を上乗せして見なくてはなりません。直接測定ではなくて、間接測定で、しかも4kHz以下は測定誤差が多いので、あくまでもこれらは現時点に於ける参考資料です。

音楽用マイクとしては、デバイス自体の暗雑音が24.5dBと若干多いのですが、4個パラレルにすることで、計算値は6dB改善し、18.5dBになります。更に供給電圧を2.75Vから3.4Vへと1.25倍に高めているので期待値は16.5dBです。でも、既に実用レベルにはなっております。ここで、暗雑音と感度と最大音圧の130dBは現時点にて測定環境が無いので、あくまでも理論換算値です。デバイスへの音の入口は直径0.4mmの穴が1個で、これが4個パラレルになるので、マイクロフォンの穴は計4個です。デバイス自体は小さいので、全体としても小口径です。また、回折効果を考慮し、角を無くした反射の起きにくい形状とすることで周波数特性を滑らかにしながら、バッフル効果で高域を持ち上げてもいます。(意匠登録済)。

最大の特徴はアンプ屋目線で回路設計をしている点でしょうか?MEMSデバイスは25kHzに20dB近くの大きなピークを持つので、これをキャンセルしなければ、ちょっと使えません。そこで電気回路で補償をしますが、普通ならフェライトコアのインダクタを使います。しかし、空芯MCカートリッジのMC-F1000を作っているフィデリックスとしては、これは使いたくないのです。磁化し易いトランスも然りで、磁性歪みの心配もあります。そこで、TWIN-Tを少しずらしたstaggered twin-Tにて最適な逆特性を作り、更に80kHz付近を持ち上げてもいます。

オーディオ回路屋としての経験から高音質技術をふんだんに投入したので、OPアンプの価格は通常の30倍位のを採用し、普通よりは大きめのパーツを採用したので基板も大きめです。フィデリックス(FIDELIX )の社名は忠実度(fidelity )の追求を目指しての命名で、原音比較法によって入力の音質と出力の音質が同じになるよう、色つけの無いアンプ開発を50年近く努めてきました。

また、これはファンタムで48Vの10mA仕様ですが、アンプ回路の重荷にならないよう、抵抗ではなく定電流回路での供給にしています。しかも、フルバランス回路によって電源変動は生じにくく、また、受けにくくもなっています。それでも電源の平滑コンデンサーは試聴テストによって200uFと大きくしました。その他ではPRP社の非磁性抵抗、PPSコンデンサーなど音質にはこだわった部品を採用しています。実は30年以上前に業務用マイクロフォン数機種の回路設計を担当した経験があります。暗雑音9dBは当時の音楽用DCバイアス型では世界最高だったと聞いております。別件でもマイクアンプやミキサーを設計制作し、納入しました。そして15年位前にはAKGのC414XLS、C214、RODEのNT2-Aの増幅回路をオールFETに改造したものを個人用として使っています。

MEMS-F1を聴いた印象ですが、鮮度は高く、透明で繊細で遠くの音もよく聴こえて、とにかく爽やかです。反響音が良く聴こえ、部屋が広くなったかのようで、情報量は明らかに多いといえます。これを聴いた後での一般的なマイクロフォンの音は、ハンカチをかぶせたかのようです。これは指向特性とは別な要因からで、あくまでも直感的な印象では、金網を通らない音という印象を受けました。実は、このマイクはデバイス内部のcharge pumpによるbias回路とMOSFETによるamplifierについては心配しながら聴いたのですが、それらは払拭され、ハイレゾ対応マイクロフォンの誕生と言えるでしょう。

少ない生録経験からすれば、天吊りの様な用途、教会の様な場所には最適だと思われます。しかし、オンマイクやステージでのボーカル用には、経験も無いので分かりませんが、合わない可能性はあります。しかし、スタジオでのボーカル用には合うかも知れません。このマイクロフォンは、良くも悪くも無指向性なので、この特徴を生かすなら決定的だとも思っております。音の入り口で拾えなければ、後からの修正は困難だからです。

1995年付近に花王がデモ用ソフトを製作し、その時はマイク4本によるPHILIPS方式でした。これは論理が綺麗で、私は音も好きです。 fidelixはそこで使うマイクアンプの設計製作をしました。この時のチーフエンジニアは、福井末憲氏で、その作業手法を私はしっかりと見つめ、しっかりと覚えました。PHILIPS方式のマイクロフォンは必ず無指向性で、その時はB&K4006でした。単一指向性は、前方以外の音に問題があるそうです。

ごく最近に、音の良いファンタムの電源が欲しいという要求が2件舞い込んできました。私自身も関心があり、以下の様なものを企画中です。しばらくすれば発売されるかと思います。まさしくPHILIPS方式で要求される4chから2chへのミックス機能が付いたものです。ここで使う電源は、FETのQポイントを使った出力ノイズ0.6μVという低さなので、一般的な3端子レギュレーターの30分の1、スイッチング電源の100分の1レベルです。

従来のマイクロフォンは「匠の技」が性能の肝ですが、これは部品の「バラツキ管理」が肝になります。また、全ての部品はプリント基板に乗り、内部にコネクターは存在せず、衝撃には強いものばかりなので、信頼性は高い筈です。なので1m位から落としても壊れないと思います。今やPCやスマホやメモリには重要情報をいっぱい預けていますが、半導体はその信頼性でしっかりと支えています。その他としては、長さ212.5mm、φ21mm、85g、ガンメタリック色です。価格は、1本250,000円(税別)を予定しています。お問い合わせは、販売店様またはフィデリックスへお願いいたします。音楽制作関係者様へは貸し出し品をご用意できますので、直接お問い合わせください。製品出荷は5月頃の予定です。ではよろしくお願いいたします。

音質比較用にサンプル音源をダウンロードできるようにしました。

アルキュオン・ピアノトリオの演奏をMEMS-F1と、B&K4006で同時収録しました。KORG MR-1000を2台使ってDSD128(5.6MHz)での収録です。どちらもシリアルナンバーは3000番台のモデルをSSDに換装し、バッテリー駆動としました。曲はハンガリア舞曲1番の後半で、2024年3月9日に国立にある佐野書院にて収録しました。部屋はかなりデッドなので、録音物としてはやや疑問もありますが、マイクの違いを聴くにはかえって分かりやすいと思われます。バイオリンの音色やピアノの高音の違いが分かるのは当然として、ピアノの左手やチェロの違いもよく分かると思います。PCMでも聴けるよう192kHzサンプリングに変換しましたが、なぜか音が少し濁るので、176.4kHzにすると、上手く変換されました。DSDの編集用に使われるPCMフォーマットとして、352.8kHzの24bitが使われ、このフォーマットをとくにDXD (44.1kHz系)と呼ぶ意味が分かりました。いずれにしても、以下はハイレゾ信号なので、スマホやPCでも簡易的に変換した音として聴けるかも知れませんが、正しい音でない可能性は高いです。なので、ダウンロードした音源を、本格的なハイレゾ対応のオーディオ装置でしっかりと聴いて頂ければ幸いです。

B&K4006 5.6M hungarian dance オリジナルDSDIFFフォーマット

B&K4006 176k hungarian dance KORG AQUA dithering 使用

B&K4006 44.1k hungarian dance KORG AQUA dithering 使用

FIDELIX 5.6M hungarian dance  オリジナルDSDIFFフォーマット

FIDELIX 176k hungarian dance  KORG AQUA dithering 使用

FIDELIX 44.1k hungarian dance  KORG AQUA dithering 使用

PCMのWAVファイルはPCやスマホでも聴けるようですが、分かる場合も、分かり難い場合もあるようです。最低でもDVDやCDに焼いてオーデイオシステムでしっかりと聴くことを改めて推奨いたします。

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